2013年 07月 28日

私の師匠…

20数年前のある日、私は高知市内のあるお宅の2階で、居候の如くのんびりと滞在していた。


2階で寝ていると、
一階の台所で、師匠のお母さんが、自分の為に、遅い朝食を作ってくれている…
包丁がまな板を叩く音が枕元まで聞こえてくる。

毎晩朝方3時、4時頃まで蘭談義は続くので、朝食は10時過ぎからゆっくりと。

師匠もゆっくりと…

そして一緒に食事を頂く。

高知市の日曜日は、市が立つのでブラブラと出掛けたり…

今では有名な、高知の日曜日市である。

夏は、師匠のお子さん2人や、何処か近所の子供達も一緒に、山の清流に行って涼をとったりと…

スローな時代のマッタリとした時だった。

風蘭の成長もスローな時代だったからか、商売のスピードもスローであった。

インターネットも普及していなかったし、情報は人伝。

ヤフオクなんかも無かったし。

大阪の料亭、桜花壇で近畿風貴蘭会の展示会が開催されていた時に、私の富貴蘭の師匠、松岡正伸氏に出会ったと記憶している。

氏は、北海道大学出で林業が専門であるが、大学在学中は、殆んど海外を放浪されていたと云う変り者。

ベトナム戦争の時は、ラオスで1人テントをはってキャンプしていたとか、アジア方面には特に詳しい。

師匠の逸話の中で、私の感心した話をひとつ、ご紹介しよう。

私が小学生の頃に流行った歌で『シクラメンの香り』と云うのがあったが…

師匠曰く
『シクラメンは好きで、何回も花を咲かせているが、香りは無いではないか!』

そう言われると確かに、と思うが、
私なんかは、『歌詞なんだから作詞家さんも色んな表現のしかたがあるのだ』と、流してしまうところが、
氏は、素朴に疑問を持って、調べ始めた。

インターネットのない時代なので、本などで調べるしかない。

その後に、氏が行きついた答えが、英国王立のキュー植物園に、英文で手紙を書き、香りのあるシクラメンがあるなら種を送って欲しいと云うもの…

1ヶ月後に種が到着、一年後には花を咲かせて、香りのあるシクラメンの原種があることを自分自身で確認したと云う話。

こんな話を聞かされてから、
『この人って、俺より変わってるわ』と思い、私は素直に自分の負けを認めた。

それから、師と仰ぎ、当時私の一番興味深い対象になっていった。

若い頃の私は、この狭い蘭の世界から抜けて、いろんな世界を見てみたいと云う気持ちが強かったので、毎晩続く師の植物の話や放浪話が、私にとって最高の勉強になった。




昨夜1年振りに、松岡氏と電話でお互い近況を伝えあった。

インターネットもかなり普及し、昔の様な流通形態も無くなりつつある。

ある意味便利な世の中は、この世界の本当の楽しみ方を失いつつあると、私は師匠に訴えた。

これには、師匠も同感してくれた。

そこで私は、当時師匠が何でこの世界に入ったのか、どうゆうことが楽しくて、この世界で何を得て、何を思って卒業されて行ったのか、また書籍『風貴蘭』を自費出版された経緯等を、私のブログ上で紹介したいので、原稿を依頼したら、快く引き受けて頂いた。

8月中に、何回かに分けて紹介して行く予定ですので、お楽しみに…。

園主

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by 0130hide | 2013-07-28 09:31 | 蘭亭 コラム
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